2022年7月の「それいゆ」で、長幸美先生が、「ありがとう」の効能効果について論を展開してくださっていますが、今、この「感謝」行動を組織マネジメン
トに活用する例が出てきています。その理由は、自律的なチームを生み出すためには感謝感情が重要であるという論文が出てきているためです。互いに感謝の気持ちを持って接することで人間関係が良くなることは、いわば当たり前のことですが感謝をすれば、何がどう良くなるのか、ということの研究が進んでいるのです。

なぜ感謝は組織行動に影響するのか。

それは、感謝という感情は、他の数あるポジティブな感情と比較して、他者との関わりによって産まれるという特徴があるからです。

昨今の組織は、とくにチームワークを重視します。プロジェクトが大きくなればなおさら、1人で出来ることなど限られているのですから、同僚や上司といかに質の高い協力を得るか。それがチームの実績を左右します。だからこそ、他者との関わりによって産まれる感謝行動が組織力を高める、という説明は納得がいきます。

感謝は個人のモチベーションも高める

感謝には、組織力を向上させる効果のほか、モチベーション向上にも効果があることが明らかになっています。「Enhanced academic motivation in university students following a 2-week online gratitude journal intervention」は、オンラインで2週間、感謝日記をつけてもらった大学生がどのように学業意欲が向上したのかを研究した論文ですが、感謝日記をつけることで大学生の学業へのモチベーションが明らかになったと報告しています。概要を説明しますと、本研究では、84名の学生を感謝をするグループとそうでないグループに無作為に分け、感謝グループは、毎週最初の6日間、1日1回オンラインシステムにログインし、感謝の気持ちを感じたことを最大5つまで列挙するよう求めめました。一方、そうでないほうのグループには、毎日の自己評価のみを依頼しました。その結果、感謝日記を課題として定期的に行っている参加者は、学業意欲が有意に向上することが示されました。

このように、個人の意欲にポジティブな影響を与えること、組織力向上に影響を及ぼすなど、感謝は大きな可能性を秘めています。読者の皆様は、長先生のコーナーをぜひ読んでみてくださいね。


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