●医療現場の逼迫状態
医療従事者が不足している。医療セクターでは、求人倍率は2倍(2020年10月)になっている。医療職は資格ありきの専門家集団の上、様々な法的制約(基準)もあり求人に苦労する。他の業界は、COVID-19で失業している方も多いと聞くのに、我々の業界は人材不足のためにパニック寸前。限りある労働力をなんとか効率的に配置することができないか。他の業界からこちらの世界へ人材の移動が起きないものか。
●労働(力)移動という言葉をご存知ですか?
労働力移動とは、労働力の担い手が、主に労働市場の機能を通じて、異なる企業や業種、職種、地域の間を移動することとされている。日本は諸外国に比べて、解雇規制が厳しく、終身雇用制が(今のところ)標準的で労働力移動はそもそも緩やかである(出典日本経済新聞)。逼迫する医療業界の人材不足を考えると、なんとかこの労働(力)移動が起きないものかと願わずにいられない。されどその一方で、なかなか難しいだろうなとも考える。そして今回のCOVID-19でますます難しくなったのだろうな、と落ち込んでしまう。たとえば看護師の使命は、診療の補助と療養のお世話(法律で規定されその為に資格がいる)だが、COVID-19の時代、この業務がどれほど危険なことか。その危険を承知で引き受ける人がいるだろうか(看護職の場合、本来業務のほか、事務作業等マルチにできるスキルが要求されるし)。介護の世界もまた然りである。しかし、このままで良いものか。くり返しになるが、医療業界にはもっと外の力が必要だ。医療機関もパフォーマンスを上げていかねば医療は、いつまでも「特別な業界」のまま。それでは医療の質も大切なスタッフの給料も上がらない…。つづく。
岡 伊津穂
医学博士ICD感染制御医
NPO法人日本医療・福祉環境サービス法人 理事長
職業感染共済会 理事長/ 職業感染制御研究会幹事
特定非営利活動法人日本医療・福祉環境サービス協会(JHWESA) 理事長
話はがらりと変わりますが「これだけは言いたい」
COVID-19は終息するかと思えば、今現在も猛威を奮って留まる気配が見られない。医療崩壊、逼迫と新聞、ニュースで毎日この言葉が踊っている。ここで一言どうしても申し上げたいことがある。それは、「感染防御対策は、感染経路の遮断(手洗い、マスク、密)が全てである」ということ。「何を今さら…」とお思いの方もおられるだろうが、これこそ感染防御対策の原則。これ以上に重要なことは、「ない」のである。