“行動経済学”という言葉を聞いたことがあるでしょう。数年前、厚生労働省が公表した「受診率向上施策ハンドブック」(参考)は、この行動経済学の「ナッジ理論」を活用したものです。受診率を強制ではなく、患者側が自発的な行動によって受診できるようにするための工夫や先進事例が盛沢山です。一度確認してみてください。
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行動経済学と従来の経済学との違いは、理性と感情の違い
行動経済学は、「人間は感情で動くものである」と言いますが、それまでの経済学は、人は経済的な合理性によって行動する、という前提条件のもと成り立っていました。経済的な合理性とは、かみ砕いていえば損得勘定です。従来の経済学は、人はこの損得勘定的な判断のみによって行動する、と考えられていたのです。
しかしそれは違いますよね。
我々はそれほど合理的な存在ではありません。
病院経営を例に考えてみましょう
もし我々が、「常に」「経済的な合理性」でモノゴトを判断できていれば、病床削減や転換、あるいは人材配置(リストラを含む)は、もっと簡単にできるはずです。
一般病院からの転換などもそうです。
地域ニーズや人口動態、今後の疾病構造を予測すれば、変化したほうが得策だと明らかなのになかなか出来ません。こうした「わかっちゃいるけれどできない」というものを解き明かした学問が行動経済学です。
人間は現状維持が大好きで変わることが大嫌い
行動経済学では、人は現在の価値と将来の価値を同じに見ないことがわかっていて、とりわけ、将来の価値を割り引く傾向があることを指摘します。これは「双曲割引」や「時間割引率」と言った概念で表現されます。
双曲割引傾向が強い人は、ダイエットをすると決めても、目の前に大好きなケーキが出てくると、それを食べるという現在の喜びを優先してしまい、なかなかできません。ダイエットで得られる将来の喜びは大きく割り引かれてしまうのです。
この人間の傾向は、広告、テレビCM等の消費者の心理に付け込むようなマーケティングで多用されています。健康食品など、「良く効く」、「効果がある!」といったコマーシャルは、行動経済学の知見を応用したものと言えます。“ココロも満タンに”“おねだん以上”といったみんな知ってるサウンドロゴは“利用可能性ヒューリステック”と言われ企業の知名度アップに貢献しています。CMに人気タレントが起用されていることは、ハロー効果と言われて販促に寄与しています。ブランド品が高くても売れるのはヴェブレン効果です。これは顕示効果とも言われますが、いわゆる人より高い買い物で特別感を得るといった高揚感を煽られて、つい購入してしまう人もいるということです。
行動経済学を学ぼう
行動経済学を知っていると、仕事の上でも役立ちます。たとえば、仕事を手伝ってもらう時などでも言い方一つでスムーズに行く場合があります。このほか、バンドワゴン効果、同調効果、フレーミング効果、カクテルパーティー効果等々奥深い世界です。
皆さんも勉強してはどうでしょうか。
岡 伊津穂
医学博士ICD感染制御医
NPO法人日本医療・福祉環境サービス法人 理事長
職業感染共済会 理事長/ 職業感染制御研究会幹事
特定非営利活動法人日本医療・福祉環境サービス協会(JHWESA) 理事長