ーご経歴を教えてください。
2009年からの10年間、岩手県立病院で医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)として勤務し、退院支援や相談業務などの業務のほか、院外活動として地域の多職種連携のための組織を立ち上げるなど、地域連携の基盤づくりに注力してきました。2019年からは岩手県庁に異動となり、在宅医療・介護連携推進事業や地域ケア会議を担当しています。
ー病院と行政では業務に違いがありそうですね。
医療介護従事者の連携を必要としますから、それまでの業務と関連はありますが、専門職から事務職、病院から行政と、業務の内容と立場は大きく変わりました。
ー県庁職員は、連携実務者の経験と視点を活かせますか?
異動から約2年が経過し、少しずつではありますが、MSWとしての現場経験や連携実務者として培った人的ネットワーク(コネクション)を担当している事業に活かせるようになってきました。
ー「連携実務者の経験がある」その強みを教えてください。
様々な会議で発言の機会が得られた時は、「○○病院のMSWをしていた経験から」とか「○○地域の実情を踏まえて」と前置きできます。些細なことのように思われるかもしれませんが、この一言で、「現場を知っている」と参加者が耳を傾ける確率が高まりますし、現場レベルの議論や地域の実情を考慮した検討に繋がることもあるのです。
県の事業は、医師会等の関係団体との協働が不可欠で、関係団体が参加する会議も多く開催されます。しかし、県主催の会議は、県全域に会員がいる組織の会長等が多く、全県的な傾向を掴むことはできますが、市町村レベルの課題を把握することが難しい場合もあります。また団体の代表者は経営者であることが多く、住民視点や現場のニーズよりも、経営に関する意見が多くなりがちです。そうした会議でも「地域の実情に考慮した検討に繋げられる」。それが連携実務者の経験の強みだと思っています。
ー各地域のキーパーソンとのコネクションもおありとか?
いくつかの連携組織の運営に関与してきたことで、県内各地の連携実務者とのネットワークがあります。そこで事業に着手する際には、このコネクションを活用したヒアリングをしています。地域のキーパーソンは誰か、どのように事業提案をもっていくとうまくいくか等、その地域にいる人にしか分からない肌感覚や本音を、気軽に尋ねて教えてもらいます。
このような情報は、国や県の調査によるデータや会議では得られません。個人的な意見も含まれるので、事業を実施するにあたり中核的なエビデンスにはなりませんが、事業をいかにして進めるべきか、どんな効果を生むのかを明確にすることができます。
ー連携への想いを教えてください。
全国連携実務者ネットワークの設立時のパンフレットに、「私たちが見据えること、連携実務者がつなぎ手として地域で活躍できる社会」と記載しています。病院の連携実務者としても、県庁の職員としても、「つなぎ手」であることに変わりはなく、人と人とをつなぐことによって生まれる効果を、県の事業に活かしていきたいと考えています。
湯沢克様プロフィール
NPO法人全国連携実務者ネットワーク理事。2009年、岩手県に入職し、10年間、MSWとして県立病院に勤務。その後、岩手県庁に異動となり、在宅医療・介護連携の推進等を担当。MSWに従事していた頃は、連携実務者同士のネットワーク構築や、地域の医療介護連携のための研修会の開催など、多職種連携の円滑化に資する取り組みをいくつも実践。来週は、全国連携ナイトスクール登壇予定。
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