●COVID-19で見えてきた業界の問題
先週からの続きです。
医療介護の世界は典型的な労働集約型業種である。生産要素に占める資本の割合は極めて低く、人の労働力に頼る割合が大きい。にもかかわらず、あらゆる業種でスキルの標準化が十分なされていない現状がある。
看護師の仕事などは、一昔前に比べると大分標準化されてきているが、十分に質の担保がなされているか、というと眉唾だ。これは看護師側の問題ではなく仕組みの問題である(念のため)。
たとえば、一度離職した看護師が復帰するとなった時、経営陣が見るのは、「救急病棟の経験あり」とか「ICUの経験あり」だけでは?その文言だけで判断し、数日間のオリエンテーションで現場に放つ。
これでは質の担保ができるわけがない。
COVID-19が起きて、余力ある病棟から逼迫した病棟への人の移行がすんなりいかないのは、「危険な病棟は怖い」という心理もあるが、こういう事情もある。
COVID-19禍の緊急事態では、医療業界を取り巻く課題がいくつも明らかになったが、問題は、平時に戻った時だ。これらの課題をすっかり忘れてしまうのではないかと不安になる。
思えば最初にCOVID-19爆発が起こった時も、蔓延するまでに時間があったが、振り返ってみて、「十分な対策が取られた」とは言い難い。
未知の感染症、人類初めての危機なのに先送り…。「日本人の国民性かな」にならないことを願っています。
岡 伊津穂
医学博士ICD感染制御医
NPO法人日本医療・福祉環境サービス法人 理事長
職業感染共済会 理事長/ 職業感染制御研究会幹事
特定非営利活動法人日本医療・福祉環境サービス協会(JHWESA) 理事長
話はがらりと変わりますが「これだけは言いたい」
COVID-19は終息するかと思えば、今現在も猛威を奮って留まる気配が見られない。医療崩壊、逼迫と新聞、ニュースで毎日この言葉が踊っている。ここで一言どうしても申し上げたいことがある。それは、「感染防御対策は、感染経路の遮断(手洗い、マスク、密)が全てである」ということ。「何を今さら…」とお思いの方もおられるだろうが、これこそ感染防御対策の原則。これ以上に重要なことは、「ない」のである。