厚生労働省は、1月18日に4月から適用する介護保険改定に対する報酬加算の新たな単位数を公表しました。

質の向上と連携がポイント

2021改定は、自立支援や重度化予防、科学的な介護ニーズなどに重点が置かれ、リハビリテーションに関わる項目も多岐に渡っていますが、共通してあるのは、「質の向上と連携だ」と考えています。様々な場面で求められる科学的介護、目的とその効果(アウトカム評価やプロセス評価)がPDCAに組み込まれたことは、まさしく質の向上を目指すためですし、そのためには、特定の部門の頑張りだけでは達成しにくくなっており、連携の視点が不可欠なのです。データ提出等の対応は近年求められる傾向にありましたが、今回はより強化されています。

新たなデータベースの話題も

厚労省は、利用者の状態やサービスの内容等の情報を幅広く集める「CHASE」を本格稼働させると同時に、リハビリ情報に特化した既存の「VISIT」との一体的な運用も始めることにしています。これを機に、それぞれの名称を統一した名称へ見直すことが決まりました。「life」です。Long-term care Information system For Evidence の頭文字とのこと。今後は、「life」への情報提供やフィードバックを要件とする加算を各サービスに新設して行くものと推測します。

データ収集へのアレルギーをお持ちの経営者の方も数多くいらっしゃいますが、ポストCOVIT-19、アフターCOVIT-19時代は、そうも言っていられません。

もともと、経済産業省は、2018年に発表した「 DX レポート」の中で、2025年までに日本企業のデジタルトランスフォーメーションが進まなければ12兆円にも及ぶ経済損失が生じると各企業に警鐘を鳴らしていました。それでも「医療や介護は特別な業界だから」と安心しておられたかもしれませんが、一般の業界からやや遅れるにしても、必ずその波は押し寄せますし、今回のCOVIT-19によって一気に加速しています。好む好まないとは関係なく、データベース構築など、できることから進めることが大事です。

多死時代がそこまで

今回の改定項目のトップはもちろん「感染症や災害」でしたが、それ以外で、多くの皆さまに共通する項目として、迫りくる多死時代への対応、連携も挙げられていました。ちなみに「令和3年度介護報酬改定における 改定事項について」のPDFを検索してみたところ、「看取り」のキーワードは80回、連携は、155回も登場しています。厳密な分析ではありませんが参考になると考えます。

たとえば、「看取り介護加算」の新設です。こちらの加算は、これまで「死亡日の30日前から死亡日」にかけて認められていた加算ですが、今回、死亡日の「45日前から31日前」の項目が新設されました。その算定要件にはもちろんACP(人生会議)が組み入れられていて、下図に示すように「人生の最終段階における医療ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことが必要とされています(算定要件等)。つまり死亡日からの時間が長くとられた、ということは、「いよいよ最終段階が迫った」という時からではなく、もっと早い段階から、看取りに関する協議の場を持ち、その会議には、介護メンバーにも参加してほしいと言うメッセージが込められている、と分析しています。

出所:厚生労働省:「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16033.html

ただ、介護施設の方からすると厳しい加算ではないか、と類推します。人生の最終段階、それも後半に近づいている方たちに誰がどうやれば言えるのでしょうか。「さあ、人生会議をやりましょう」なんて…。

そのために必要になってくるのが連携です、と考えます。

ご承知のように、介護の前段階にある医療においてもACPは取り入れられており、算定要件にある、「人生の最終段階における医療ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みは、すでに「地域包括ケア病棟」等の要件となっています。つまり、こちらに入院したことがある方であれば、「どう生きたいか、逝きたいか」について話し合いをしている可能性はありますので、連携してスムーズに取り入れることは、利用者さんのお気持ちや家族等のお気持ちを大切に尊重することでもあります。

改定のメッセージ

改定のメッセージは、おかれた立場や職業にとって受け取るものは違ってくると考えますが、「それいゆ」では、改めて、つながることの重要性、「利用者一人ひとりにとってどのようなケアを提供しているのか」が問われていると受け止めました。その上で、例えば看取りについても「質」が重要で、「そのために何をすれば良いのか」を具体的に示すように迫られている―――と。

「それいゆ」バックナンバーより

「それいゆ」では、質の高い看取りを実践している医療機関や介護施設もいくつも紹介しています。たとえば、2019年には、愛媛県松山市の「たんぽぽ先生」で有名な「ゆうの森」さんをご紹介しましたが、当該法人では、「質の高い看取り」に必要な8要素(右下)を哲学として掲げておられました。改めてシェアします。

2019年10「それいゆ」より
感染対策

改定では、全サービスに共通することとして、感染症対策の強化委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等が示されています。3年間の経過措置期間を設けることになっていますが、「介護施設事業所における新型コロナウィルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」は早急に確認してください。

出所:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要」

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