コロナ禍の為巣篭もりの正月から緊急事態宣言の1月。そしていよいよワクチン接種が始まった2月。現場の混乱を思うと複雑ではあるが、「時間のゆとりができた」というところもあるのでは?そういうわけで、今回は本を紹介したいと思います。紹介したい本は多数あるが、まずは、この一冊を。

“還暦からの底力”出口治明著(講談社現代新書)

出口さんの多読は有名で、思考法や経済の話から、最近では世界史、日本史と歴史書の話題も多い。小生も多数愛読しているが、優しくわかりやすい文体で書かれているため、本質をついた内容も、読みやすいものばかりだ。「還暦からの底力」もまさにそうで、「還暦」とは銘打ってはいるけれど、中身は還暦を迎えた読者のみを対象としておらず、むしろ若い人にも積極的に読んでいただきたい。

「還暦」と聞くと何を想像しますか?

若い人にしてみれば、「還暦なんて関係ないよ」というところだろうか。「還暦」=老後というイメージを持つ人もいるかもしれないな。還暦を迎え定年となり「何もすることがなく途方に暮れている」人も多いとか?でもそれっておかしくないですか?今は「人生100年」時代ですよ?

一方、著者は、還暦後起業(ネットライフ企画株式会社を設立)し、古希を迎えて立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任されてる。本書は、そんな眩いキャリアを持つ出口さんが、人生を心豊かに歩いていくための方法を教えてくれる一冊となっている。

人生を豊かに生きるポイントは、色眼鏡(その人の価値観や人生観)を外し、「数字・ファクト・ロジック」というエビデンスで世界を見ること、健康寿命を延ばすこととのこと。健康寿命を延ばすためには社会との向き合い方が大事で、何事にも興味を失わないこと、好奇心を持ち続けること

第二章「老後の孤独と家族とお金」

すべての章を紹介することはできないので、いくつかの章をご紹介しよう。まずは第二章。ここは、老後の孤独と家族とお金について書かれている。いわゆる老後の不安というやつです。

長年医師をやっていると、「老後が心配だ」とか「寂しい老後」という言葉をよく聞くが、出口さんによれば、“老後の孤独”が問題になるのは、「問題設定自体がおかしい」のである。(これからは変わってくるだろうが)一括採用、終身雇用、年功序列、定年という高度経済成長期の中で生きてきた現在の還暦世代のみなさんは、「仕事こそが人生」という方も多い。ゆえに、仕事の終わりが来ると人生までもが終わったかのような気分となり孤独を感じる――。出口さんはこの章で、「定年」というシステムに疑問を呈している。

第三章「自分への投資と、学び続けるということ」

ここでは、読書のすすめ、勉強のすすめ、世界の見方を歴史に学ぶことの大切さを語ってくれている。学びについてはとくに読書が一番とある。絶えず自己投資を行うことで、自分のできることを増やすことの意義を教えてくれる。

最終章「第5章持続可能性の高い社会を残すために」

議論やコミュニケーションのやり方が重要であるという。根拠なき精神論や、エビデンスなきエピソードを語ったところで議論やコミュニケーションが成立しないとのこと。この章も納得感しかない――。

非常時に読書なんて?!とお思いか?

皆さん、何かと忙しい毎日をお過ごしのことと思います。新型コロナウイルスの出現によって、新しい日常が強いられ、新しい問題に追われ、医療機関の経営はどこも厳しい状況です。「そんな時に読書かよ!」とお叱りを受けるかもしれないが、大変な時だからこそ、あえて読書を勧めます。あるいは、これから先、もっと大変になりそうだから、今のうちから知識の積み上げをしてほしいと思います。アルベルト・アインシュタインも「我々の直面する重要な問題は、その問題を作った時と同じ思考のレベルでは解決する事ができない」と言っています。

この本の副題“歴史・人・旅に学ぶ生き方”を知ることは、これから先の皆さんの人生を豊かに導いてくれるとも思うのです。現状起きていることは、我々が経験したことがない非常事態ですが、歴史を紐解けば、疫病との闘いは過去にもあって、乗り越えてきた歴史も確かにあります。知識を磨くことで力をあわせ、この事態を乗り越えていきましょう。

岡 伊津穂
医学博士ICD感染制御医
NPO法人日本医療・福祉環境サービス法人 理事長
職業感染共済会 理事長/ 職業感染制御研究会幹事
特定非営利活動法人日本医療・福祉環境サービス協会(JHWESA) 理事長

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\それいゆ執筆陣/
佐々木直隆、岡伊津穂、中林梓、長幸美、納見将志、岩尾篤、石井洋、福田幸寛、新改法子

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