唐突だが、今回は書体の話をしたい。書体といってもいろいろだ。たとえば明朝体は横線が細く縦線が太い。一方、ゴシック体は線の太さが均一に見える。最近は、手書きのような書体やデザイン性に富んだデコラティブな書体もあるらしい。ただ、こうした書体は、誰にとっても「見やすい」だろうか。もちろんそんなことはない。そこで、約15年前、視覚研究者と協力し、視認性をアップしデザイン性をキープした書体が作成された。ユニバーサルデザインフォント(以下、UDフォント)だ。皆さん、ご存知ですか?

大きければ良い?

最初にUDフォントを導入した自治体は、福岡県にあるらしい。市発行の広報誌について、市民から、「字が読みにくい」と意見が届いたことが発端とか。その自治体は、まず、文字サイズを大きくすることを考えたそうだ。しかしそうなると、字数が制限され、しっかりした情報を伝えられないというジレンマに陥った。そこで、UDフォントを採用した。

結果、以前のサイズのまま視認性を良くして広報誌作成ができるようになったとか。

発達障害とフォント問題

UDフォントの導入が難しかったのが教育 の現場だ。小学校の教科書などは、「教科書体」 が使用されていたからだ。「教科書体」は、筆書 きの楷書に近い形であ る。筆の入りや留め、払い、さらに正しい書き順や画数がわかるように 配慮されてのことだ。

ただ、ディスレクシア(読み書 き障害)を含む発達障害の子供は、払いやはねの 部分は鋭く怖いと感じる。筆押さえの部分が際立って文字を読み進められない子供もいる。

そこで、8年をかけて、教育現場で使えるUDフォントも開発された。すると面白いことが起きた!教科書体の文章と UDフォントの文章でテストを実施したところ、生徒116人中、全問正解は教科書体では4 人しかいなかったが、UDフォントは30人であった。文字が読みやすくなれば、読むスピードが上がる。早く読めれば、その分問題を考える時間も増える。現在はUDフォントが採用されている。

良いものは、しなやかに即導入

この知見は、一般企業では既に取り入れられ ている。食品や薬品に表示されている成分表、取り扱い説明書などは、UDフォントを導入しているところが多い。顧客に理解されたいのなら、理解してもらえるよう工夫をする。ぜひ とも見習いたい姿勢だ。医療機関、介護施設なども、高齢者、障害者が少なくない。院内掲示物、案内板、問診票、食事のメニュー等も考えてみたい。

みなさんは、UDフォントを使用した広報誌、掲示物を作成していますか?

岡 伊津穂

医学博士ICD感染制御医
NPO法人日本医療・福祉環境サービス法人 理事長
職業感染共済会 理事長/ 職業感染制御研究会幹事
特定非営利活動法人日本医療・福祉環境サービス協会(JHWESA) 理事長

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\それいゆ執筆陣/
佐々木直隆、岡伊津穂、中林梓、長幸美、納見将志、岩尾篤、石井洋、福田幸寛、新改法子

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