いつもお世話になっております。社労士の石井です。さて、コロナ禍の今この状況であっても、医療機関は営業していくにあたってどうしてもスタッフが必要な業種です。仮に現職員が退職してしまい、新たな人材を募集する際に、どのような手を打ち、どのように自院に必要な人材を見抜くかどうかという点は医療機関において永遠のテーマだと思います。
社労士という仕事柄、色々な医療機関の採用面接立ち合いや求人の相談対応を行ってきました。
その過程でいくつか学んだ点として、
①採用求人時の注意点、②採用面接時の注意点
と2段階があります。
採用求人時の注意点
- 仕事の内容は分かりやすく、丁寧に記載しているか
- あっさりとして、淡々とした記載内容の求人内容になっていないか
- 自分の言葉で、本当に求人者に来て欲しい内容を書いているか
- どういうスタッフ層が欲しいのか(年齢、経験等)が明確になっており、そのターゲット層に向けた内容になっているか。
- 自院の最大の魅力(処遇面、雰囲気、有給休暇や休みの取りやすさ等)をアピールできているか
といった点が挙げられます。当たり前のことを書いているように見えますが、まず上記の内容がきちんと網羅できている求人は思った以上に少ないものです。例えば、業務内容の記載で、医療事務・受付や看護業務、看護助手といった内容が相当程度多いのが実際のところですが、その内容を細かく区分して、どういう仕事をするのかイメージしやすくします。その内容が難しいのか、それともある程度の経験があれば自分でもできるものか、仮に経験が浅い場合には誰が教えてくれるのか、というイメージが出来れば応募者の方は反応します。今の状況下でも医療機関の求人は非常に争奪戦が厳しいものです。ハローワークに求人を出しておけば、という時代は過ぎ去っていますので、沢山の求人の中で応募者に見つけてもらう工夫をしましょう。
工夫を尽くしてなお求人が来ない場合は、何かを見直す必要があります。
見直すポイントは、給与・賞与面なのか、それとも採用媒体(HPの有無等)なのか。その辺りは地域の周辺の求人情報をインターネットで簡単に検索してみることをオススメします。
採用面接時の注意点
採否を決する面接時の注意点は何でしょうか。求人のご相談を伺っていると、どうしても人員がいなくて、応募してくれた方をすぐに採用したいという状況は少なくありませんが、その場合でも必ず以下の点は確認した方が採用のミスマッチを結果として避けることに繋がります。
- 履歴書をきちんと貰い、職歴を確認する。職歴があまりにも多い場合は一瞬踏みとどまる。特に会社都合、といった内容は必ず経緯を確認する。履歴書の写真の使い回しには注意する。
- 自分の過去の業務内容や経験の話に具体性があるか
- 前職や過去のやり方に対して不満の色が見えないか
- 履歴書の職歴の間に不自然な空白がある場合(職歴が繋がっていない場合)は理由を確認する
- 退職理由は必ず聞く。ただし、退職理由は応募者も聞かれることは分かっているため、事前に用意はしていることを留意する。
- 面接時の質問は「はい」「いいえ」で答えられる質問はしない。できる限りその場で考えて回答する必要がある質問、「なぜ」、「何を」「どうやって」といった質問を行う。
- 質問と回答内容がずれるときは注意する。
それでも採否を迷った場合
私は採用を見送ることをお話しています。医療機関において、一人の影響力は思いのほか大きいものです。その一人を採用してしまったがゆえに、かえって既存のスタッフの方が疲弊していくケースを何度も見てきました。本当に自院のスタッフとして相応しいかどうかを一度の面接で全て見抜くのは困難ですが、これから人口減少の時代になり、今後更に採用が難しくなっていくことが想定されます。医療機関において、スタッフの質は生命線です。より良いスタッフを採用できるように、一つでも考えるきっかけになれば幸いです。
石井洋
社会保険労務士/(株)佐々木総研 人事コンサルティング部 部長/長崎出身。九州大学卒業。社会保険労務士。フットワークが軽く、かゆいところに手の届くコンサルティングで、主に若い経営者からの人気を誇る。就業規則や人事考課制度の見直しから、スタッフミーティングの開催など、幅広いコンサルティングを行う。セミナー講師の経験も豊富で、その場のニーズに合わせた柔軟なセミナーを得意。趣味はバドミントン・フットサル・旅行。 石井のコラム