連携

【寄稿】病院における地域連携室の成り立ちと全国連携実務者ネットワーク

―全国につながる連携の輪―

人口動態が大きく変化

 日本の人口は明治維新(1868年)の頃の3,330万人から増加の一途を辿り、2000年頃には約12,784万人とピークへと達しました。しかしその直後から急速な人口減へと変化し、2050年では推計9,515万人とピーク時と比べ約3,000万人減少します。そのような中、老年人口が約1,200万人増加するのに対し、生産年齢人口は約3,500万人、若年人口は約900万人減少し、階層別人口比率が大きく変化。その結果高齢化率は2050年で40%に増加し、特に75歳以上の後期高齢者の割合が大きく占めることになります。その間約200年。大きな社会保障改革が行われ、医療と介護、福祉の変革の中、医療に携わる我々が次世代に向けた眼差しをもっていくべきなか、真価が問われる時代となりました。そのような背景の中、地域包括ケアの体制構築のため市町村主体に様々な取り組みがされております。その中にあって医療は地域住民の健康を維持するためとりわけ大きな役割があり、介護との連携、住民啓発においても市町村、医師会と共に広く視座をとっていく使命があるといえます。地域との接点、病院の最前線で機能しているのが地域連携部門(以後地域連携室)です。以後、地域連携室の成り立ちと役割、そして全国のつながりについて述べていきたいと思います。

経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」
経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」

地域連携室とは

地域連携室は、それぞれの病院が地域でどのような役割を担う病院であるかによっても、その機能や形態・名称にも様々な違いがあります。病院と診療所の連携などを主体的に行い、地域の連携医療機関からの紹介などを中心に業務を行う形態、また転院調整や退院支援を主体に医療福祉相談を中心とした業務を行う形態、そして前述と後述の機能をワンストップで担い業務を行う形態といった具合が一例です。

成り立ちの背景については、平成12年の診療報酬改定が大きな転機

平成12年の診療報酬改定で、医療機関相互の役割分担が明確に謳われ、特に病院と診療所との連携いわゆる病診連携の体制に加算が付くこととなりました。それに伴い、紹介予約や返書管理など連携をコーディネートすることを期待された地域連携室が多くの病院に設置されることとなりました。その頃の配置職種としては多くの病院が事務職員を配置しました。その後、平成16年の診療報酬改定でそれら連携の加算は廃止となり、地域連携パス運用に加算が創設、それ以降より充実した連携の実践のため地域連携室に医療ソーシャルワーカー(以後MSW)や看護師といった多職種が配置する病院が多くなったと考えられます。地域連携室とありますが、実はMSWの配置された医療福祉相談室の成り立ちとは別であり、それまで長く病院における医療福祉相談、またそれにまつわる連携はMSWが行ってきました。その背景を理解しておくことは、地域連携部門の歴史を振り返る際にはとても重要です。また、福祉専門職であるMSWの視点だけでなく、看護の視点は最も連携に不可欠であり、退院支援における看護師の配置は連携部門に専門職種が重層的な配置が行われた結果となりました。

このような背景とこれまでの制度の変遷を踏まえ、近年の医療・介護の制度改革の中、病院の立ち位置の明確化に伴い、その最前線の機能を発揮する地域連携室の役割は今までにも増して重要となる時代に突入したと言えます。

全国連携実務者ネットワーク

前述したように、医療情勢の大きな変化の中、各医療機関においては大きな変革が求められており、その中で地域医療連携に従事する連携実務者個々の存在は、ますます大きな役割を担っていくことが期待されております。そして超高齢社会を迎え、生涯住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるためには、医療及び介護サービスなどを地域で一体的に受けることができる地域包括ケアシステムを構築することが喫緊の課題とされており、連携実務者やネットワークに対する期待は今まで以上に高まっています。

平成28年5月、特定非営利活動法人全国連携実務者ネットワークを設立

そこで、我々連携実務者のスキル向上や意見交換の場の提供、連携実務やネットワークに関する情報の提供、及び相談窓口等の事業を通じて、全国の連携実務者の業務の質を高め、より良い医療及び介護サービスを国民が享受できる豊かな保健医療福祉社会の推進に寄与することを目的として、特定非営利活動法人全国連携実務者ネットワークを平成28年5月に設立いたしました。

我々医療連携実務者は、地域医療連携の実践を通じて、健康な街づくり推進のため行政や医師会はもちろんのこと、市民・企業等へ向け社会の全てをつなぐチャレンジを行っていきます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

特定非営利活動法人 全国連携実務者ネットワーク 理事長
新潟市医師会 地域医療推進室 室長 斎川 克之

病院のパフォーマンスを最大限に引き出すには地域との連携があってこそ。そして地域包括ケアシステムにおけるソーシャルワーカーが果たすべき役割はとても大きく、地域で活動する時代です。だからこそ「院内をつなぐ、地域をつなぐ」さまざまな取り組みを学び、一緒に実践していきましょう。

ネットワークの紹介

(1)連絡会に会員価格で参加することができます。
(2)ニュースレターで、連携実務に役立つ情報が届きます。
(3)研修会等に優先的に参加でき会員価格で参加可能とのこと。
(4)会員専用のメーリングリストに参加可能。
年会費5000円から~とのこと。

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\それいゆ執筆陣/
佐々木直隆、岡伊津穂、中林梓、長幸美、納見将志、岩尾篤、石井洋、福田幸寛、新改法子

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