これらの行動は、一見簡単そうに見えるけれど、手間がかかり、気が緩んだ時についうっかり忘れてしまいがちです。ですから、大切なことは潜在意識に落とし込み習慣化すること。当院では、その部分を徹底するために、院内啓発班の結成をし、分かりやすい啓発ポスターの掲示を行いました。

院内啓発班?院内感染を起こし大変な時に「これ以上業務が増えるのか?」という雰囲気になりませんでしたか?

ありがたいことに、院内啓発班は、脳神経内科の石井淳子先生、石山浩之先生、中澤晋作先生が手上げしてくださり、チームを組んでくれました。平時でも過労気味の先生たちですが、忙しい合間を縫ってやってくださいました。

—医師が積極的だと組織全体の動きが活発化しそうですね。

はい。COVID-19は誰か1人でも気を緩めている人がいると院内に入ってくる可能性があります。『感染対策は、一部の人や部門だけが完璧にできていても、片方の部門が不十分であればできていないのと同じ。コロナは人間の弱いところを見逃さずに入り込んでくるとても賢いウイルスだ』。これは、当院病院長の言葉ですが、本当にその通りで、感染対策のほころびにつけ込んで、感染拡大を引き起こす危険性が極めて高い…。「感染対策を実施する」だけでは全く不十分で、適切な場面と正確な手技、そして職員が誰一人欠けることなく遵守できなければ感染拡大の阻止はできないのです。だからこそ院内啓発は大事でした。ドクターたちの力添えは私たちを勇気づけ、これから先、病院が立ち治っていくきっかけになったと思います。

—啓発班は、具体的にどのような活動を?

はい。当院では、病棟での適切なPPE着用や手指衛生の徹底のためチェッカー役を導入しましたが、啓発班は、「チェッカーバッチ(下)」を作り、リハビリ療法士、医師など多職種がバッチを付けて全体の意識向上に努めています。3名の先生たちは忙しい業務の中、こうしたバッチのイラストを作ったりもしてくれました。ポスターもそうなんです。かわいらしいでしょう?

院内啓発班チーム 脳神経内科 (左)石山浩之先生、(中央)石井淳子先生、(右)中澤晋作先生
たしかにかわいい。かわいすぎるというか…。感染予防ポスターって、もっとこう、恐怖心をあおるような恐ろし気なものを想像するのですけど…。

ポスターもすべて意図的にかわいらしいものになっています。たしかに状況は深刻なのですが、ほっこりできるようなものを目指してくださったのです。医療従事者はやはり多大なストレスを感じていました。不安も皆が抱えていました。行動制限も強いられて、唯一癒しの時間となるはずの食事や休憩時間も一定の間隔をあけ、緊張しながらです。そんな中、危機感をあおるポスターだと心がくじけてしまうかもしれません。

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